ご挨拶

この度、前代表理事 浅野先生から代表の任を引き継ぎさせて頂きました。本学会は1991年に前身の整形外科リハビリテーション研究会として、初代代表理事の林 典雄 先生が国立津病院勤務時代に師事されていた整形外科医長 加藤 明先生の指示のもと、国立療養所東名古屋病院附属リハビリテーション学院の同級生である前代表の浅野 昭裕 先生と共に発足しました。当時、二人の後輩でもあり、林先生の転勤に伴い赴任した私がお2人の指示のもとに手伝わせて頂きました。今思えば、この様な大きな学会の小さな初めの一歩をご一緒させて頂けた事は光栄に思っております。初めは10人にも満たない人数で症例検討を行い、意見を求められてとても緊張した記憶があります。そんな小さな会が、年月とともに徐々に大きくなり、学会へと変遷し、現在に至ります。始まりから30年が経過した実感がまだありませんが、現在、理事で活躍していただいているメンバーの殆どが当時は学生として参加されていた先生方ですので、時代を感じます。

 

この30年で理学療法のみならず、医学を取り巻く状況は大きく変遷しています。当時は先進的であった内容、意見をぶつけ合って議論していた内容も、現在では学生の教科書に当たり前のように記載されています。当然、現在議論している内容も、いずれ周知の事実として教科書に載ることでしょう。日々変化、進化を続けている医学の中で、学会としてどの様な貢献ができるのかを模索していかなければならないと思っています。ただ、情報・技術には先進的な内容と、普遍的な内容とがあります。我々は、どちらも重要だと考えています。普遍的な基礎が有ってこその最先端だと思います。常に基礎に立ち返るよう心掛けたいと思っています。盲目的に治療手技の呈示・習得を目的とするのではなく、その背景をしっかりと理解できるための知識と基礎技術の習得を優先し、その先に先進技術へと繋げていけるようにしたいと考えます。

 

現在、当学会の会員が関係する書籍やビデオ・アプリなどが20種類程あります。現在執筆中のものもあります。かなり情報提供をしているものと自負しております。今後も更に増やしていけたらと考えております。現代の学校教育を取り巻く環境は厳しさを増しており、卒業までに習得できる知識や技術は限られてきているのが現状です。今後は更なる卒後教育が求められると思われます。施設単独での教育には限界があります。そんな時代に求められる教育システムの選択肢の一つになり得る団体でありたいと思っております。声高に訴えるだけでは何も生みだしません。手取り足取り技術を教えるだけでも成長は望めません。泥臭く、地味な基礎の繰り返しが成長するための何よりの近道である事を示し、面倒がらずにやるべき事は指導してやらせる事が必要だと考えます。しかし、それだけではなく、その先の目標や希望を目の前に呈示していく事を同時に行うことで、地道な努力を誘導する事が重要だと考えます。先進の知識や技術を習得するためには普遍的基礎が重要であるという実感を持っていただけるように我々も共に研鑽していきたいと思っております。

 

最後に私の座右の銘をご紹介します。

 

(とう)()成蹊(せいけい)」・・・「桃李(桃とスモモ)もの言わざれども下に自ずから蹊(みち)を成す」

 

これは、漢の時代の李将軍の人格を讃えた故事です。学会の存在が未来永劫、この様な存在であり続けられるよう、皆様と協力して、微力ながら尽力していきたいと思っております。会員の皆様をはじめ関係各位のご支援とご鞭撻を賜りますよう、今後とも宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

整形外科リハビリテーション学会

 

代表理事 岸田 敏嗣